女性の卵

1生分の卵はすでに毎日何十個と減っている
 卵子と精子が受精して受精卵ができるところからすべてが始まります。でも、その卵についてはかなり錯覚があります。
 まず、卵の大もととなる"原子卵胞"といわれるものは、女性がまだ胎児のうちにすでにできています。つまり、みなさまが胎児としてお母さんのお腹の中にいる時から、みなさまのお腹の中に一生分の卵がすでにちゃんとできているます。
 そして、いったんできたら、それ以降は細胞分裂して数が増えることができないという、非常に特殊な細胞が卵です。ですから単細胞のまま、一度できたらあとは数が減るだけです。
 卵は妊娠5カ月か6カ月の胎児の頃が一番多く、500万個とか700万個あるといわれます。ところが「おぎゃあ」と生まれる時にはすでに200万個くらいに減り、思春期、つまり生殖年齢に入った頃で10万個から30~40くらいになっています。思春期以降も1カ月に1000個くらい減るといわれています。つまり、毎日何十個も減っていくのです。
一定年齢に達して生殖のためのプログラムが起動し始めると、この卵胞(卵子を育てる袋)を刺激するホルモンが出はじめ、ホルモンの刺激を受けて、卵胞はだんだん成長・成熟して大きくなります。いちばん元の原子卵胞からだんだん成熟して大きくなるのに、だいたい80日かかるといわれています。
 そして中でも一番成熟した大きな卵胞「主席卵胞」の中の卵子が1個だけ、卵胞を突き破って卵巣の外に飛び出します。これが"排卵"です。主席卵胞は最も優秀という意味ですが、実は大きさが月経周期に合っているので育つだけで、質がいいので育つ訳ではなく、選ばれたのでもなく、偶然育ったのです。そして残りの卵胞はしぼんでいきます。
 こうして一生に排卵される卵は月に1個、一人の女性の生涯でせいぜい400~500個といわれています。
 卵子は毎月卵巣の中で新しく生まれて成長するものと思っている人、月に1個しか卵を消費しないと思っている人は間違いです。
 また不妊治療で注射を打つと副作用で卵が少なくなると心配する人もいますが、何もしなくても、卵は毎日何十個も確実に減っているのです。治療は全然関係ありません。